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いずれにしても、この種の影響は焼却という方法をとる限り避けられないものであるが、ここで重要なことは、もし焼却場所が海岸から離れていれば焼却面積はかなり大きくてもよいが、海岸近くであれば、小さくしなくてはならないことで、言い換えれば、処理薬剤を散布して燃やす範囲はそのような距離、さらには風向に依存するということである。よって、この関係は現場での焼却に際して、その面積がすぐに求められるようにすることが必要となる。
一方、後の方の作業者に対する安全の問題は、火を着けて焼却するというと、多くの人はそのままで燃える石油類の火災を想像しがちである。しかし、ここの焼却で行われる燃焼は、すでに述べたように処理薬剤を散布しない部分は燃えない、いわば制御されたそれだから、薬剤の散布、点火ともにその危険が作業者に及ぶ危険性は原理的に極めて小さい。むしろここで肝心なことは、本当に火が処理薬剤の散布されていない領域に移らないか否かにあるが、小規模な実験ではこの点は後記のように確認されている。
(3)燃焼時間の調整
焼却に伴う影響の評価に当たってもう一つ忘れていけないのは、その燃焼時間である。なぜなら、焼却作業は誰にとっても早く終わるのがよく、また短時間の燃焼であればそれが数回繰り返されても長時間引き続いて燃えるよりは、周囲への心理的な影響は小さいとみられるからである。
しかしながら、前にも記したとおり、この燃焼時間は同じ処理薬剤の条件のもとでは、それは油層の厚さだけによって決まる。従って、これを短くしようとすれば、ムース化油層の厚さを薄くする以外にない。そうかと言って現実のムース化した油層を薄くすることは不可能に近い。となれば燃焼時間を短くするには処理薬剤でそれを工夫するか、点火個所を多くして過渡期を短くするしかないことになる。これは薬剤選択や着火法の決定における一つの重要な視点である。
その意味では、ムース化油をオイルフェンスなどで集め油層を厚くして焼却するという考え方は却って燃焼時間を長くするだけで好ましいとは思えない。
おそらく、この操作が必要になるのは、油層が著しく薄くてそのままでは燃えない場合だけであると思われる。

 

 

 

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